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2008年1月

2008年1月22日 (火)

ガスと電気、徹底比較(2)

 「ガスと電気、徹底比較(1)」の続きです。
 さて、前回の議論で、ガスと電気のキロワット時当たりの一般家庭での小売価格が算出できた。

  電気は21.04円/kWh
  ガスは9.69円/kWh

である。では、お湯を沸かす際の両者の価格について考えてみよう。
 ガスでお湯を沸かす場合、いくつか方法がある。が、今回は湯を沸かしてお茶を飲む、という設定の場合の効率を考えることとし、ガスコンロと電子レンジでの湯沸しを比較することにしよう。
 まずはガスコンロの効率から考える。東京ガスのガス機器カタログからガスコンロの効率を抜き出してみると…

  ガスコンロ+なべ    効率 50.5~56.9%
 
だとのこと。この数値はJIS規格による計測法で計測した効率であって、じつは現実に即したものではない。JISで定められた測定法とは次のようなものなのである。

 ・わきから炎が漏れないような底の広い平鍋に水を張る。
 ・ふたに開けたの小さい穴から攪拌棒を差し込んで水を攪拌しつつ加熱
 ・加熱前の水温より50度上昇するまでのガス消費量を測定、水の温度上昇が何カロリーに相当するか計算し、ガスのエネルギー総量で割って効率を求める

 ちなみにJIS規格は、このときのガスコンロの効率が40%以上でなければならない、と定めている。しかし、現実の台所で、沸騰まで沸かす場合には温度上昇幅は最低でも80度にはなるから、そのぶん逃げる熱も増えるだろう。また普通のやかんの場合、それほど底が広いわけでもないので、炎がわきから漏れることによる損失も発生する。JISの数値が現実離れした実験から得られた、あまり役立たないものであることは否めない。
 それでもまだガス機器の場合はカタログで数値が出ているからいい。電子レンジの場合は、効率がカタログで表示されていることはあまりないだろう。とはいえ、電子レンジの「定格消費電力」と「定格高周波出力」の比が目安にはなる。
 電子レンジの目立つところに「600W」とか「700W」と書かれているアレは、消費電力をあらわしているのではないことをご存知だっただろうか。電子レンジは高周波の電波を食物に当てて、食物中の水分子を振動させることによって加熱する。この高周波の出力のワット数、すなわち「定格高周波出力」が、「700W」などと表示されてものの正体である。700Wの電波を作るのには、実際にはそれ以上の電力を消費する。この消費電力が、電子レンジ本体の裏側にひっそりと表示されている「定格消費電力」で、定格高周波出力よりもずっと大きい。私の自宅にある電子レンジは定格消費電力が1270Wで、定格高周波出力は700Wと表示されていた。この比率を「効率」だと考えてパーセント表示すると、だいたい55%となる。実際には、電波のすべてが食物に吸収されるわけではないので、損失もいくぶんか発生するはずだ。
 どちらにしても、数値は実際の台所でのものではないので、当てにならない。
 そこで、私は思い立って実験し、測定してみた。測定は、以下の2段階にに分けて行った。(すべてについて測定は1回ずつしかしてません。いい加減なものです)

 ①ガスコンロと電子レンジをフルパワーで使用した場合のエネルギー消費率を測定。
 ②300ml(お茶2杯分くらいの量)の水を沸騰させるまでに何秒間かかるか測定。

①ガスコンロと電子レンジのエネルギー消費率測定
 どの家庭にもある機器で測定するため、今回は「電力メーター」と「ガスメーター」を使って消費エネルギー量を測定した。東京電力とか、東京ガスの人が検針のとき見るメーターを利用したのである。うちについていたメーターの場合、電力メーターは0.01kWh(キロワット時)単位まで計測可能な目盛りがついていて、ガスメーターは0.0002立方メートルまでの目盛りがついていた。
 まずは、家中のガス機器をストップし、ガスコンロを5分間、全開で燃焼させたときの消費量を計測した。いちおう、もったいないので水をいっぱいに張ったやかんをコンロに置いた。このときのガスの消費量は0.0268立方メートル。東京ガスが東京地区に供給するガスの規格は13Aで、このガスは1立方メートルあたりの45メガジュールの熱量を持つので、0.0268立方メートルだと1206000ジュールに相当。これを300秒間で消費したので、エネルギーの消費率をワットで表示すると、

 ガスコンロ全開での燃焼の場合、消費率はほぼ4000W

ということになる。
 こんどは同様に、電子レンジの消費電力を測定する。定格消費電力はあくまでメーカー測定のものであって、実際にはこれより多くの電力を消費することも考えられる。
 まず、家中のコンセントからプラグを抜いて、あらゆる電気機器をストップさせる。この状態で電力メーターが動いていないことを確認。電子レンジを同じく5分間運転させてメーターを読み取った。電子レンジの空焚きは危険な気がしたので、水を張ったコップをいくつか中に入れて運転した。このときの消費電力は0.12kWh。読み取りが0.01kWh単位でしかできないので、いい精度とは言いがたいが…。ここから電子レンジの消費電力は…

 電子レンジの「真の消費電力」は、ほぼ1400W

やはりメーカーによる定格消費電力より、若干多かった。

②の1 ガスコンロで沸かすのにどのくらいかかるか?
 つぎに、300mlの水を沸かすのにかかる時間を計測する。コンディションを同じにするため、水温を同じにし、容器も水温と同じになるようにしてから、計測を行った。このときの水温は8.8度だった(測定精度±1度程度の料理用デジタル温度計を使用して計測)。使ったやかんは、昔、学校のストーブの上に乗っていたような形のやかん(たとえば、以下参照。http://www.rakuten.co.jp/nonaka/436147/525921/#471219)。ここに計量カップを使って300mlを注ぎ、先ほどのガスコンロで沸かした(やかんについていた水滴は沸かす前にきれいにぬぐった)。その時間を計測したところ、沸騰までの時間は1分57秒だった。
 先のエネルギー消費率と掛け合わせ、これをWh=ワット時で表示すると、
 
  4000W×117秒/3600ジュール=130Wh

 ガスの料金は9.69円/kWhなので、300mlの水(8.8度)を沸騰させるのにかかるガス料金は1.26円という計算になる。

②の2 電子レンジで沸かすのにどのくらいかかるか?
 同様に300mlの水をコーヒーサーバー用のフラスコに入れ、電子レンジで加熱、沸騰までの時間を計測した。かかった時間は3分21秒だった。このときの消費エネルギー量をガスの場合と同じくWhで表示すると、

 1400W×201秒/3600ジュール=約78Wh

 電気の料金は21.04円/kWhなので、300mlの水(8.8度)を沸騰させるのにかかる電気料金は1.65円という計算になる。

 というわけで、お茶を入れるのにかかる料金は、ガスのほうが、電気の場合よりも25%安いという結果になった。(電力メーターの読み取り単位が粗かったので、数値の精密さは低い。しかし、慎重に考えて電力メーターの読みに±10%程度に読み取り誤差があったと考えても、ガスのほうが安いという結果には影響を与えないと思われる)

 では、エネルギー効率はどうなのだろうか。1mlの水の温度を1度上げるのに1カロリー必要ということから考えて、8.8度の水300mlを100度にするには27390カロリーの熱量が必要である。これを単位換算してWhで表記すると、ほぼ31.8Whということになる。これをベースにして、ガスコンロと電子レンジのエネルギー効率を求めると

 ガスコンロ  31.8Wh/130Wh=25%
 電子レンジ  31.8Wh/78Wh=41%

 こう書くと電子レンジのほうが効率がよさそうだが、そもそも電気は1次エネルギーの石油やウラン燃料を燃やして発電されている。発電機の効率はコジェネを考えに入れなければ40%ほどなので、トータルでの効率は16%ほどということになり、この点でもやはり、ガスコンロに負ける。
 これ以外の比較ポイントとしては、CO2排出量が問題になるが、これは発電にどれくらい原子力が使われているかに依存する。しかし、きりがないので、まあこのへんでお開きにさせていただきます。

2008年1月 4日 (金)

飛んだノコギリの初速は時速何キロだったか

 もうずいぶんと前のことになるが、07年11月、松山市で空からノコギリの破片が降ってきたという事故があった。当初、どこから来たのかわからなかったその破片は、しばらくして落下地点の鉄工所から500メートル離れたところにある製材所から飛んできたものだということが明らかになった。
 ノコギリが高速運転中に破損し、その破片がものすごい勢いではねとび、製材所の屋根を破って空に打ち出された。そして500メートル離れた鉄工所まで飛んでいき、さらに、その鉄工所の屋根を突き破り、落ちてきたのである。
 さて、このとき、「高速運転」だったというノコギリの運動の速さは、最低でどのくらいだったと考えられるだろうか。
 何かを遠くに投げるとき、空気抵抗や風の影響を無視すれば、45度の角度で射出した時にいちばん遠くまで飛ぶ。このノコギリの破片も45度の角度で飛び出し、空気抵抗の影響を受けずに放物線を描いて500メートル先まで達したと考えよう。
 詳しい計算は、写真に示すが、射出角が45度のとき、射出される物体の初速を秒速 メートル、飛距離を メートル、重力加速度を とすると、それらの関係は以下のように表される。

  

=√( gx ) 、 ^2/

 ここでは、重力加速度を10 m/s^2 として考え、飛距離 に500メートルを代入すると、初速は秒速70.7メートル、すなわち時速に直すと254.5キロである。ちなみに滞空時間は10秒間、最高到達点は125メートルという計算になる。
 意外に感じるかもしれない。もっと速くないと、そんなに遠くまで届かない気がするのではないだろうか。
 ボールの遠投のときの実感から類推してみれば納得できるはずだ。野球の公式ボールでの遠投の場合、ちょっと野球の心得がある人でも、なかなか100メートル以上は投げられない。100メートル投げるためには、計算式から初速は時速113キロ以上でなければならないことがわかる。人類最速のピッチャーの球速が時速160キロくらい、秒速にして44.4メートルだとすれば、上記の式に当てはめると遠投の飛距離はほぼ200メートルになる。100メートル遠投で113キロ、200メートル遠投で160キロ。つまり、飛距離を倍にするために、初速は倍にする必要はないのだ。初速の2乗に比例して飛距離は伸びていく。
 いずれにしろ、ノコギリを時速250キロ以上のスピードで動かすなんて、すごいというか、恐ろしいこととお考えになる方は多いだろう。普段のわれわれの生活のなかに、そんな高速に動くものなんて、そう存在するものじゃないから…、と思うかもしれない。しかし、それもそうではないのだ。現代に生きるわれわれは、物理的に高速に運動するものを日々使用しているのである。たとえば、ハードディスクだ。3.5インチハードディスクは最近は毎分7200回転のものが普通である。3.5インチHDDの直径はセンチに直すとほぼ8.9センチ。これが毎分7200回転しているとすれば、その外縁部のスピードは、時速117キロメートルに相当するのである。
 まだこんなもので驚いてはいけない。最近のCD-ROMドライブは最大で54倍速というものまである。この54倍速CDが回るとき、外縁部のスピードはどのくらいになるのか。CDの規格によれば、通常速での読み取りのときには、読み取っている部分が秒速1.2~1.4メートルで動くよう回転が調節されるという。 つまり、内側を読み取るときには速く回転し、外側を読み取るときは遅く回転することになる。控えめな見積もりで、外縁部近くを読み取るときにのみ、最大読み取り速度の54倍速が実現されるのだと考えると、そのときの外縁部の速度は1.4×54で、秒速76メートルほど、時速に直すと272キロである。さっきのノコギリより、速い! さらに、もし、中心に近い部分を読み取るときにも54倍速が実現するのだとすれば(たぶんありえないが)、ざっと計算して、データが書き込まれている最も内側の部分の半径と、CDの外縁の半径は2.5倍くらい違う(内側部分が半径約2.4センチ、いちばん外側は半径6センチ)から、そのときの外縁部の速度はなんと時速680キロということになる。高速なCDドライブが恐ろしい音を立てていることがあるが、あの音の恐ろしい感じには、物理的な現実が伴っていたのである。
 もし680キロで回転するCDが割れて45度の角度で射出され、ありえないことではあるが、何の空気抵抗も受けずに飛んでいったとすれば、その飛距離はほぼ3.6キロになる。すさまじい。
 しかし、実際、CDが回転中に割れることなんてあるのだろうか。回転時の遠心力を考えてみよう。外縁部が272キロのスピードになるという控えめな見積もりの場合でも、そのときにかかる遠心力は、なんと重力の9500倍になる。これは、1グラムのものが9.5キロの重さに相当する力で引っ張られるということだ。680キロ出ているのなら、重力の6万倍近い遠心力がかかる。これは同様に、1グラムのものが60キロの重さに相当する力で引っ張られるということ。たぶん、このあたりからもうちょっといったら、CDは割れるだろう。CDの読み取り速度に限界があるのは、光デバイスの性能のためでも、コンピュータの処理速度のためでもなく、CDが作られている材料の引っ張り強度に限界があるためなのかもしれない。

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